コラム

われらまちの農縁団!!

コラム

農業分野における、働き方改革による労働時間の上限規制の影響

2019年4月1日より、日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、 「働く労働者のニーズの多様化」などを背景に、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにすることを目的の一つとして、「働き方改革」と称し、働き方改革関連法が順次施行されています。
その一環として、長時間労働の弊害をより是正するため、改正労働基準法により、一部の業種を除き、労働時間の上限が罰則付きで(中小企業は経過措置により1年後に施行)法定されました。
従来から、農業は天候に左右される業種のため労働時間、休憩、休日が適用除外になっています。このことは、今回の改正で大きく変わるところではありません。
従って、従来通り、労働者に法定労働時間を超える労働をしてもらう場合、割増賃金の支払いや、36協定などの所定の届け出も必要はないことになります。

一方、一般的な業種の規制については、例えば、特に注目すべきものとして、「特別条項」と呼ばれる実質的に労働時間の上限がなかったものが、明確に年間720時間までとなり、また健康・福祉の確保措置を実施しなければならないことが明示されています。

また、従来から、法定労働時間を超える場合、36協定の締結と届出を必要としましたが、この届出も様式が変わり、これまでと比較して非常に細かな記載が必要になっています。

◆ 36協定の主な変更点

旧様式

新様式

特別条項の上限時間なし

特別条項の上限時間あり(年間720時間)

 

特別条項適用者の健康確保措置を明記

1書式

2書式(特別条項の詳細記入欄の拡大)

 

この労働時間の上限規制により、世間的にも、また他業種が労働時間の管理にこれまで以上に敏感になる今後は、農業分野においても、今までと同じやり方では、新規採用希望者の減少、また既存の従業員の不満を招き、職場環境の悪化、退職率の上昇等、農業の特殊性を考慮した労働時間の柔軟な運用が業界全体にとって、かえって不利益なものになる恐れがあります。

また、同時に安全衛生法も改正され、雇用する労働者のさらなる健康管理の徹底の観点から、農業を含む全業種に例外なく雇用する労働者に対してガイドラインに基づいた労働時間の適正な把握や長時間労働者に対する労働時間の通知義務等、労働者の健康確保の措置が新たに追加されています。

これまでも、他業種並みの労働条件と人材確保の観点から、法定割増賃金を支給する農業法人や1年変形労働時間制を取り入れている農業法人も年々増えてしていますが、世間での「働き方改革」をきっかけとし、自社の労務管理の現状の把握から今後を見据えた体制の見直しの時期だと考えます。

上記のように長時間労働の是正と労働者の健康管理を含む「働き方改革」による、労働基準法及び安全衛生法改正の趣旨と内容を理解し、他業種に準ずる労務管理を行うことは、働く労働者の職場環境の改善による退職率の減少等、自社の、さらなる円滑な農業経営の維持発展につながることでしょう。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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「働き方改革」!年休休暇の義務化が農業系に与えるインパクト

世間でキャッチフレーズとして定着しつつある「働き方改革」を実現するため、2019年4月より、働き方改革関連法が順次施行されています。
その一環として、特に注目されている1つとして、労働基準法の改正による年次年休休暇(以下 年休)の付与義務化が挙げられるでしょう。通常、企業に多大な負担を強いであろう法改正では中小企業に経過措置として大企業に遅れて1年後施行など一定の猶予期間がありますが、この改正では、経過措置がなく、より全企業一律に実施されています。
従来から、「年次年休休暇」は、働く労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的に、労働者の重要な権利として保障されてきました。
しかし、現実の運用の中は、日本独特の慣行や文化的背景も相まって、その取得率が先進他国と比較しても低調な現状(50%程度)を鑑み、今回の「働き方改革」を実現するためにも、年休の取得促進が課題の1つとしてその対応策が検討されてきました。
その結果として、今回の労働基準法の改正により、全業種において、年10日以上の年次年休休暇が付与される労働者(図表1)に対して、年次年休休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。これは、いわゆる正社員だけでなく、パート、アルバイトとしての位置づけであっても、要件を満たす労働者についても同様です。

①原則となる付与日数

使用者は、労働者が雇入れの日から6か月間継続勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上を出勤した場合には、原則として10日の年次有給休暇を与えなければなりません。
※ 対象労働者には管理監督者や有期雇用労働者も含まれます。

②パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者に対する付与日数
● パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者については、年次有給休暇の日数は所定
労働日数に応じて比例付与されます。

● 比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下
または年間の所定労働日数が216日以下の労働者です。

※表中太枠で囲った部分に該当する労働者は、2019年4月から義務付けられる「年5日の年休取得の義務化」の対象となります。

(図表1 出典:厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得より)

なお、違反した企業には罰則付きの制裁が予定されていますので、例えば今まで年次年休休暇の権利が発生していることを知らなかった労働者についても、経営者の適正な年休管理の法的な知識の習得することを前提として説明、取得させる必要があります。

ちなみに、弊社の今回の制度改正ではありませんが、年度の途中でパートから正社員へ切り替わる労働者の年休の取得についての、具体的な勤続年数や付与日数についての、ご相談が多くあります。結論として、勤続年数に関しては、パート時代の年数を通算し、年休付与日数については、労働日数を新たな年休付与日の時点の雇用契約の労働日数を基準として日数が決まります。(図表2)

(図表2 出典:東京労働局 しっかりマスター労働基準法(有給休暇編)より)

さて、年休の義務化により、それが一企業に与える影響はどれほどなのか?簡単に見ていきましょう。

事例)
A社  社員5人
下記①については、一年間の総作業量から社員の年休取得分の労働時間を差し引くと同時にコストは変わらないことを考えと・・
①所定8時間の 8時間×5人×5日=年間200時間分の作業時間の減少

また、②前年まで年休を取得していなかった労働者の代替として臨時社員を雇うと考え、単純なコスト増しと考えると・・      
②時給単価1000円×8時間×5人×5日=20万円(年間)

このような状況の中、企業はどのような対応策を取れば良いでしょうか?
年休取得義務化の対抗策として、多く活用されるであろう制度について、年間スケジュールを見直し、繁忙期と閑期を適切に把握した上での、計画年休の導入が考えられます。具体的には、年休のうち、5日を超える部分については、労使協定によりあらかじめ取得日を決めておくことができます。取り決めのパターンとして①企業全体での年休の一斉付与②グループ別の交代制付与③年次年休給与付与を個人別に付与など、自社の実情に合わせて、あらかじめ年休取得を計画して取得してもらい、労働者一人一人の確実な年休取得を実現します。

一方で、法律ではない角度から切り込んだ農業の「働き方改革」経営者向けガイドが、農水省より発表されています。主な内容として、作業を省力化する最先端の技術を活用の活用から、人材の育成、労働者にとって、やりがいのある職場環境を整備していくことによって、「選ばれる企業」になるためにどのような取り組みを行うべきかをその考え方や事例を豊富に盛り込んだものになっています。
その中では、共通する理念として、経営者の意識が高く、どうしたら生産性が高く、かつ「人」にやさしい環境作りができるかということを経営者が考え、取り組み、実現していくこと、これが真の「働き方改革」なのだと!
具体的には、
・ 「働き方改革」に向けて段階的に農業経営者が取り組む具体的な手法
・ 個々の経営者の取組をサポートするために必要な事項
・ 理解と共感を広めるための推進手段
等々
このガイドでは、上記の事例のような、年休義務化に伴う企業の負担をプラスに変えうる業務効率化や労働者のモチベーションを高め、生産性を上げていくヒントが隠れています。
筆者は、年休義務化を決して企業の負担ととらえず、むしろ機会と考え、法律だけでなく、個々の労働者にやさしい職場環境を育むことによって自社、ひいては日本の農業の発展につながることと思っています。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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農業推進化の取組み

近年、農業経営の法人化の件数が増加しています。具体的には、平成7年に約5000法人だったものが、平成28年現在で約2万800法人になっています。国は、なお農業経営の法人化を推進する施策を進め、平成25年の日本再興戦略において、平成35年までに5万法人の目標を掲げています。
また、農水省より平成29年2月に「日本再興戦略2016」と題し、農業改革のKPI(キーパフォーマンスインディケーター:重要業績評価指標)の進捗及び施策の実行状況が発表されています。
この文献の中で、筆者が注目するKPIとして、上記の法人化件数目標、6次産業化の市場規模拡大、農産物の輸出増加の数値目標等が挙げられています。今後、時代の流れからこれらの推進を支援するためのAI(人工知能)の活用を柱とした補助事業も続々と出てくるものと筆者は予想しています。
さてKPIの成果目標達成のための一つ、法人化件数の目標達成の事業として、国は、一昨年度より、具体的な農業経営法人化の推進策として、農業経営力向上支援事業を都道府県を実施主体として進めています。その主たる内容として、①税理士や中小企業診断士など法人化・経営継承に関する専門家派遣、セミナー・研修会の開催、相談窓口の設置等の取組、②集落営農・複数個別経営の法人化(定額40万円)や集落営農の組織化(定額20万円)に要する経費等を支援する③雇用就農者のキャリアアップの促進、農業界と経済界の人材のマッチングシステムの整備をするなどを柱にしています。
農業経営力向上支援事業の目玉は、②に関して法人化に際してのかかった経費について定額40万円、集落営農化に際してかかった経費の定額20万円の助成でしょう。詳細は、現時点でまだ判明していない部分がありますが、要領では補助金の使途を例えば、公的機関へ手続き費用や税金、雑役務費(手数料、印紙代等)、専門家に支払う経費(謝礼金 、旅費)、印刷製本費、会場借料、消耗品費等など幅広く認められています。ただ、法人の構成員が複数戸であることが要件になっています。なぜならば、農業経営の法人化の推進は個々の農業経営者の枠を超えて、その地域の中心となる農業経営体の育成・確保が第1の目的であるからです。仮に、他の個人経営の農家さんで国が求めるニーズと合致しているならば、この推進事業を視野に入れて、事業規模拡大を進めれば資金面、事業経営面においても有益になることは間違いないと思います。
法人化には様々なメリットがあります。一般的に言われているものとして、経営管理が徹底され、家計との分離が可能となることです。特に農業分野では個人事業で家族的な経営が多くみられます。資金面では、補助金や融資などについても、個人経営より、もちろん優遇され、税制特例も多数受けられます。
そして、現在の労働市場の状況として、一番のメリットは法人化により、優秀な人材確保が格段にしやすい環境にあることが挙げられます。特に今の新卒を始め若手は農業分野で独立するためではなく、就農することが多くなってきています。
国の農業施策と自社の経営のニーズを踏まえて、補助事業をうまく活用すれば、よりスムーズに事業展開ができるものと考えます。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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健康診断のお知らせが眠ったままになっていませんか?

皆さんこんにちは!われらまちの農縁団の藤田です。今回は、働く大前提となる健康を守る
ために行われる健康診断について見ていきたいと思います。
一般的に従業員については、正社員並みに働く人に対しては、法律で定められた所定の項目について健康診断実施義務が経営者の方にはあるので受診させているとことかと思います。
しかし、経営者の方ご自身はどうでしょうか?経営者の方はとにかく忙しいものです。経営者の方は健康診断を受ける義務は法律上定められてはいませんが、下記の協会けんぽに加入している方などは、健康診断のお知らせが、毎年加入している保険者から届くことと思います。
まず、農地所有適格法人などの法人で協会けんぽや健康保険組合といった社会保険に加入している経営者(又は役員)の方は、所属の保険者によって変わりますが、通常よりも費用負担が軽くなります。ちなみに、経営者や役員の健康診断費用は一定の要件を満たすと福利厚生費として法人の経費として認められます。
協会けんぽなどに加入していない、個人事業主の方については、国民健康保険に加入していることと思いますが、純粋に自費で病院の健康診断を受診するのは非常に負担になります。本来健康診断の費用は病気やケガをしたわけではないので、保険が利かないからです。
そこで、お住いの地方自治体の健康診断を受診することを考えみてはどうでしょか?内容や料金については、安価で受診できるところや、自治体によっては無料で受診できるところもあるので、ホームページや保健課に問い合わせるとよいでしょう。
例えば、ある市の健康診断では通常の健康診断項目に加えて、40〜74歳の公的医療保険加入者は、高齢者医療確保法に基づく「特定健康診査」(メタボ健診)、34歳以下の若者向けの健康診断、人間ドックの補助費用、さらに結果に基づく特定保健指導をバリエーションも豊富になってきています。

冒頭でお伝えした通り、仕事は「体が資本」。心身ともに健康でなければ質の高い仕事をすることはできません。特に個人事業主の方なら尚更です。
リスクマネジメントの視点からも、毎年の健康診断受診は欠かせません。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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アグリテックの将来~企業の枠を超えたプラットフォームの形成へ~

農業分野へも機械化の波が押し寄せてきました。以前は導入や維持コストが高く大規模農家だけが活用できたものも技術の向上が進むにつれ、中小農家にも浸透し始めています。
現在の日本の農業はや農業人口の高齢化と担い手不足に伴う耕作放棄地の問題や、それに伴うように次世代へ日本の農業技術の伝承が進まないことなどといった種々の解決すべき課題を抱えています。ところで、アグリテックという言葉をご存じでしょうか。アグリテックとは、農業(Agriculture)と技術(Technology)を組み合わせた造語でありその意味は幅広く、特に農業分野とIT分野の融合は、無限の可能性を秘めているといわれています。
例えば人工知能やIT、ロボティクスを始めとした最先端テクノロジーを農業に応用させ、効率的農業を目指します。またセンサー、ドローン、クラウド、モバイルデバイスを駆使した農業のIoT化も、アグリテックに含まれます。
アグリテックは、農業を支えるに多様な分野のシステムに活用されています。作業の進捗や育成の状況を管理する「生産管理システム」、農機を通じて環境や育成データをもとに適切な環境を制御する「農業機械連携システム」等々
実際の導入事例としては、クボタが営農支援サービス「KASS」を開始しています。「KASS」とは対応の農機を使った無線ユニットを通じて、田植えから収穫などの作業をセンサーからデータを取得でき、そのデータを翌年度の農作業に活用していくというもの。また、「アグリロボトラクター」と呼ばれる無人のトラクターを有人のトラクターが監視をしながら、同時に2台を動かします。これらは農業人口が減ることが予想される中、農業に詳しくない人もスムーズに業務を進めることが出来、生産性の向上も期待できます。
一方、ソフトバンク・テクノロジーが全国農業会議所の運営による農地情報公開システムのデータを利用して、全国の遊休農地を検索するサイトの運用を始めています。また、同時期に農産物の市場価格などのオープンデータを利用して最適な出荷時期を予測できるサービスも提供しています。
ここで重要なことは、個々のシステムは優れていても、ITベンダーや農機メーカーが異なるとシステム間での連携が困難な状況にあることが挙げられています。このことは、特に将来的に担い手不足に陥るだろう日本の農業の危機を乗り切る手段としては幾千心もとないと感じます。とりわけ今後の日本の農業を考えると世界的に誇れる農産物の安全性や品質を維持していくためには農生産技術のスピーディーかつ確実な伝承が今まで以上に必要になってくるでしょう。そのためには、熟練農家の様々なデータを収集、蓄積して優れたノウハウをシステム化することなど、全国的規模で農業データを共有できる仕組み作りが欠かせないと考えます。
国も、農業データ連携基盤で利用できるデータ使用の共通化は2013年から始めています。データ標準化によるガイドラインも作成され2017年には、最新版が公表されています。例えば、農作業の名称、農作物の名称、データ交換のインターフェイス、環境用語の用語などを統一しています。
そして、2017年5月には慶応大学が中心になり、大手ベンダー企業や農機メーカーが中心となり、異なるシステム間でもデータ連携ができる「農業データ連携基盤(データプラットフォーム)」と呼ばれるシステムを創設することを発表しています。また、農業ITを提供する際の権利や義務などをまとめた「農業ITサービス標準利用規約ガイド」、熟練農家のノウハウを知的財産保護、活用するための注意点などをまとめた「農業ITC知的財産活用ガイドライン」も発表しています。これらのガイドラインにより、農業生産者や農業ベンダーなどの権利が守られ、より農業データの共有化が促進されます。
さらに、この公共システムを基盤として、高度な各社の民間サービス(有償)を組みあわせることで、さらなる高次元のサービスの提供がなされることが期待されています。
最後に、より広い視点で海外に目を向けてみると、民間の非営利コンソーシアムであるAggatewaywoが組織されています。参加企業は世界最大の農機メーカーや農薬業界の世界最大手企業など、約260社が参加しており、XML形式のデータ標準やガイドラインを公表しています。その最高責任者であるジム・ウィルソン氏は「農業は巨大で複雑なグローバルネットワークビジネスである。多様な企業が競い合うには基幹部分で互いに協力して、農業データの国際標準を定める必要性がある」と説いています。
また、ジム・ウィルソン氏は、日本の稲作技術の素晴らしさにも言及しています。
現在までの日本、そして海外の動向を考えると、将来的に日本の農業データ連携基盤とAGGATEWAYWOを含んだ、世界をまたがるエコシステムが形成されることが予想されます。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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同一労働同一賃金が農業分野に与える影響を考える

皆さま、こんにちは!農縁団の藤田です。近年農業分野に限らず、正規社員(無期・フルタイム)と非正規社員(このコラムでは有期労働契約若しくは正社員と比べ短い労働時間で働いている労働者とします)が同じ働き方をしているのに非正規社員であると理由だけで、正規社員に比べて不当に低い賃金、その他の労働条件の格差を是正しよう(同一労働同一賃金)という考え方が世間で広がっています。
労働条件の不合理な格差を違法とする、労働契約法(第20条など)やパートタイム労働法(第8条など)は幾多の改正がなされ、図表1を基準として、正規社員と非正規社員が以下のすべてが同等であればその格差は不合理とされ、最悪、契約が無効になる場合があります。

労働契約法

 

パートタイム労働法

無期契約(正社員)と有期契約労働者

対象

フルタイマー(正社員)と短時間労働者

職務内容(権限の範囲と責任の程度)

要件1

職務の内容(権限の範囲と責任の程度)

当該職務の配置の変更(人事異動)など

 要件2

人材活用の仕組み(将来の期待、人事異動)

その他の事情

要件3

その他の事情

 

抽象的不合理性の基準が分かりにくいので裁判でも争われている事例が多数あります。
ちなみに、労働条件とは、手当を含む賃金、労働時間、教育訓練、福利厚生など労働者に対する一切の条件を含みます。
さらに国は同一労働同一賃金※ガイドラインを策定して具体的に不合理な格差になるであろうケースを上げています。今後、更なる格差是正を解消しようとする法改正がなされる可能性があります。
それでは農業分野において不合理な格差と考えられるであろう事例を見ていきましょう。
事例1
ある農家さんAでは、先祖代々の農地を所有しています。5年前に正社員として労働者Aさんを雇いました。3年後に繁忙期の出荷に人手が足りなくて、3か月契約のパート労働者Bさんを雇いました。出荷時期もあり忙しく、業務内容は、AさんもBさんも同一で、出荷作業を自分の判断でテキパキこなしています。パート労働者Bさんに通勤手当は支給していません。ちなみに、労働者Aさんと労働者Bさんの通勤距離は、ほとんど変わりません。
この事例では、労働契約法、パートタイム労働法の判断基準となる要件1と要件2に抵触しています。Bさんとトラブルになれば、通勤手当を支給しないことが違法とされることがあります。

事例2
ある農業法人では、特殊な農機具を使用していて、危険が伴うので、作業手当を支給しています。しかし、6ヶ月契約社員である、労働者Aさんは、特殊な作業を行うことがあるにも関わらず、手当が支給されていません。
この事例では、労働契約法の要件1と要件2に抵触している可能性があります。仮に周りから見て契約社員というだけの理由の格差と取られるようならば、トラブルの原因になります。

筆者としては、諸事情によりパートタイマーで働く労働者の方のモチベーションの向上をはかり、また組織として良好な職場環境を保つ意味においても、労働条件の待遇格差を縮めていくことが、結果的に農業経営の発展につながるのではないかと考えていますが、いかがでしょうか?
コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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農業経営者を支援する助成金

新規農業を始めるにあたり、設備投資や農地の確保などは予算もあり、順調に進んでいるが、肝心の人手が足りない。人を雇うにしても予算が微妙で・・このように考えていらっしゃる新規農業者の皆さんは、厚労省の雇用関係の助成金が事業運営の助けになるでしょう。厚労省の助成金は、農水省の補助金事業や経産省の創業補助事業に比べ受給要件をしっかりと満たし、適切な申請を行えば、ほぼ確実に受給可能(内規で予算枠はありますが)であり、予測可能な事業資金の一部となります。ちなみに農水省の農業分野で有名な農の雇用助成金も厳密には助成金と言われるものではありません。厚労省の助成金は農業に特化した助成金はありませんが、もちろん農業分野でも受給可能です。特に人を雇う時には、厚労省の助成金活用を視野に入れるべきであると考えます。

また、厚労省の助成金は、人を雇う以外にも従業員の人材育成・職場環境の改善、経営不振に陥った時等にも活用できる助成金が多様にあります。以下に主な受給要件と注意点を挙げてみます。
◆主な受給要件と注意点
・雇用保険の適用事業所であること(助成金は雇用保険を財源としているため)
・申請期限を守ること
・法定で定められた帳簿類を整備していること
・新たに従業員を雇い入れる日前6か月間、会社都合で従業員を解雇していないこと(雇用に関連する助成金)

代表的な助成金の一部を紹介したいと思います(平成28年度)。事業で活用できそうな助成金を探してみましょう!

助成金名

助成額

概要

雇用調整助成金

休業賃金相当の3分の2(上限あり)

経営不振等で休業、教育訓練や出向を通じて従業員の雇用を維持する

特定求職者雇用開発助成金
(特定就職困難者コース)

60万円(1年)~最大240万円(3年)

高年齢者・障害者・母子家庭の母などの就職困難者を雇い入れる

トライアル雇用助成金
(一般)

月額~4万(3か月)

安定就業を希望する未経験者を試行的に雇い入れる。障害者コースもあります。

キャリアアップ助成金
(正社員化コース)

最大72万円

有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換または直接雇用する。人材育成コース等合計8コースある。

キャリアアップ助成金
(短時間労働者労働延長コース)

最大24万円

短時間労働者の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用する。合計8コースある。

(助成額は中小企業の額)

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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個人間の農地売買契約書について

皆様、こんにちは!農縁団の藤田です。今回のコラムでは個人間の農地売買についてトラブル防止の視点から、主に買主側に立った時に、最低限契約書に盛り込むべき必要事項を確認していきたいと思います。
通常、農地を含む土地の売買においては、不動産会社を通して取引を行うことがより確実だと思います。ただ、農家さんにとって、不動産会社を通しての取引は手数料が高額になるケースがありますし、親しい関係者同士の取引や緊急の場合など、不動産会社に依頼できない特別の事情もあると思います。
それでは早速、契約書に盛り込むべき項目を追っていきましょう。
まずは、売買物件が契約書通りに存在するのか、法務局での登記簿の確認と同時に、その現況を売主とともに確認しましょう。当たり前だと思われるでしょうが、この手のトラブルは個人間の不動産の取引では頻繁にあります。その上で、土地の実測面積や隣の土地との境界線を確定し契約書に落とし込むことが必要です。契約後では、手遅れになります。登記簿上の土地の面積や境界線は現況と異なることがあるということを認識して、場合によっては専門家(土地家屋調査士等)への依頼も視野に入れるべきでしょう。
さらに登記簿上で確認することといえば、買主の所有権(自由に農地を使用できる権利)が制限される他の権利がないかの確認もしましょう。具体的には、抵当権、賃借権、仮登記など様々です。この点を売主側ともしっかり確認し、清算してもらうことを要求しましょう。
ところで、その他にも買主の所有権を制限するものとして、法令上の制限もあります。物件が都市計画法や建築基準法上においてどのような制限があるのかも売主や行政機関に確認します。
そして、農地を農地として取引する場合は、農地法3・5条の許可や届出が必要になることがほとんどでしょう。この点も、売主や行政機関と連携し権利移転が確実に行えるようにその時期、方法を契約書にしっかりと明記します。
その他、契約の当事者が契約違反を犯したときの損害賠償や解除の条項、そして忘れがちな項目になるのは、瑕疵担保責任についてです。瑕疵担保責任とは、売買の対象物(農地)に隠れた瑕疵(=外部から容易に発見できない欠陥)がある場合、売主が買主に対してその責任を負うことというものです。これは、売主の無過失責任です。例えば、買った農地の地中に大量のゴミが埋まっていたことが判明した場合、売主がそのことを知らなかったとしても、買主は損害賠償の請求や契約の解除が出来るという条項です。民法に規定がありますが、当事者間の現状に則した形で契約書に盛り込むべきでしょう。
その他の現実の所有権移転の時期など基本的な事項については、われらまちの農縁団でも、農地売買契約書のひな形を掲載しておりますので、実態に合わせて加筆修正して使用して頂ければと思います。また、具体的なご相談も随時承っておりますので、お気軽にご相談下さい。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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市民農園という選択肢

こんにちは!農縁団の藤田です。今回は農地の有効利用に資する「市民農園」のお話をしてみたいと思います。「市民農園」とは、貸し手側としては農地でありながら、自ら耕作を行えない、手放せない農家さんにとって遊休農地や耕作放棄地と化す恐れのある一筆の農地を小面積に区切って利用者に貸し出すことにより土壌の劣化を防止しするとともに、賃借料を得ることができ、また、借り手側としても農地を持たず小面積で自家用の野菜や花を栽培したり、農作業を体験できるというもので、貸し手及び借り手双方にメリットが多い制度です。また、利用者と農家さんの賃貸借契約において、本来は必要な農地法3条の権利移転の許可手続きを省くことも可能になっています(特定農地貸付法、市民農園整備促進法)。
さらに、近年、市民農園制度は別の観点からも注目されています。例えば、農作業による健康づくりや、高齢者の生きがいづくり、子どもの体験学習などにも活用され、社会福祉や教育分野にも好影響を及ぼしています。
そして筆者自身も市民農園という制度については、一人でも多くの方に農作業の素晴らしさを知ってもらえるチャンスであり、また日本の耕作放棄地の問題も含めて日本の農業の活性化の一助になるものであると思っています。
ただ、市民農園は適用される法律や運営方法などについて、奥が深いものであることも事実です。しかし、社会的な役割が増している市民農園は、農家さんにとって、とてもやりがいがあり、これから期待の大きい農業形態であると感じています。
今回は適用法律に基づく市民農園の2形態について見ていきたいと思います。
まず、農家さんと利用者が農地を賃貸借契約として結ぶか、結ばないかによって区分できます。具体的には、賃貸借契約を設定する「特定農地貸付法」(賃借)、貸貸借契約を設定しない「農地利用方式」(利用のみ)とに分けられます。現在は、個人農家さんが市民農園を開設する場合、行政への手続き上の簡易さから利用者と賃貸借契約を結ばない「農地利用方式」が主流になっています。
次に「特定農地貸付法」とは農地法3条の許可を得なくても利用者と賃貸借契約できる法律です。この法律の適用を受けるためには、市町村と貸付協定を結び、農業委員会の認定を受けなければなりません。「農地利用方式」に比べ手続きは大変ですが、筆者は、この方式の市民農園こそ本来の姿だと思っています。しかし、相続税の猶予の適用や手続きの煩雑などの問題もあり、さらなる法整備が望まれるところです。
そして、市民農園を語る上で忘れてはならない法律があります。「市民農園整備促進法」という法律です。この法律が適用対象になるかは、存する農地が都市計画区域のどの区域に当たるのか、また市町村が指定する市民農園区域に当たるのかによります。もちろん諸種の手続きは必要ですが、一番のメリットとして農地上に休息所やトイレなどを設けたいときでも農地法4条の転用許可が不要なことです。こちらの法を適用受けるには、市町村の都市計画課で所有農地が都市計画法上どの地域に当たるのかの確認することが最初の1歩になります。
ここまで、利用形態の別に適用される法律について見てきました。近年は市民農園の開設を積極的に支援するために、例えば、県や市町村が助成金、補助金を交付している地域もあります。またHP上で市民農園の情報を載せているところもあります。
法律や農家さんの農地の現状や立地などを総合的に検討して、市民農園の開設という選択肢も考えてみてはいかがでしょうか?

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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人の見える化も大切

これからの農業は規模拡大は避けられない課題かと思います。従来家族経営としてやってきたものから、従業員を新たに雇い管理していかないといけなくなります。また経営規模が大きくなると、どうしても経営者の方は外に出て行く機会が増えてくると思います。いろいろな会合があったり、取引先と打合せしたり、農作業以外で経営者が忙しくなりがちです。新しい従業員が増え、経営者が忙しくなることの懸念は、農作業の質の低下です。細かい点まで自分の目で見れなくなり、従来防げていたことが防げなくなる可能性があります。 ここで役に立つのが記録したデータです。経営者が外にいても、自分の農場での作業状況をスマートフォンで確認することができます。数値データはだけでなく、栽培の様子を画像も合わせて記録すればより状況はわかるかと思います。そしてここでのポイントは人にあります。作業者の熟練度がバラバラになりますから、人で作業の精度もバラバラになります。それを数値も含めて比較して教育に役立てることができます。同じ作業をしても、全然作業時間に違いがあればそこに何か改善点があるかもしれません。
また、ここで忘れてはいけないのが人とのコミュニケーションです。数値だけでなく、従業員一人一人とコミュニケーションを密にしてその人の考えや思いを経営者が理解し、また経営者の考えを伝えることも農園全体の活性化につながります。経営者が多忙で時間がなくなかなか対面で会えない場合には、世の中で使われているSNSの様なコミュニケーションツールを導入するのも手かもしれません。農園で使う場合には、栽培記録と合わせて使うのが効果的です。作業内容を記録するだけでなく、各作業者がその日学んだこと、気付いたこと、工夫したこと、感じたことなどを記録し、それに対して経営者や先輩従業員がコメント、アドバイスするなどで離れていてもコミュニケーション、教育をすることができます。農業においては人が一番重要な経営資源です。個人毎の作業状況を把握したり、個人のスキルや経験値含めて見える化することで農園全体の生産性が向上できます。

●IT導入はスモールスタート
ITを導入するなった場合の流れですが、まずは最初に書いた様に「目的を明確にする」ここからストートです。目的が明確になったら、それを実現できるサービスが世の中にあるか探すことになります。自社で新規に開発してもいいですが、コストが高くつきます。既存のサービスで実現できるのであれば、その方が安くすみます。最近はクラウドサービスという呼び名で出ているサービスがあります。これらはサービスは月額課金で利用できたりして低コストで開始することができます。 ある程度使えそうなサービスが見つかったら試しに使ってみることをお勧めします。無料で利用できる期間が設定されていたり、月額課金制であれば1ヶ月だけ利用してみるなどすればあまりコストを掛けずに試せます。使ってみて初めてわかる課題などありますので、大きな投資をする前にちゃんと検証しましょう。 また、やはり実現したいことは農園毎に違うので、市販のサービスでは痒いところに手が届かないことがあります。その際には、新たにサービスを開発することになります。ここはそれなりのコストが掛かるので、慎重に進める必要があります。農業の現状に理解があるパートナーを見つけましょう。また、本格的な開発をしないでも、Excelの知識があれば簡単なツールを作ることはできます。まずは少しITに強い従業員の方や外注を雇って簡易システムを作ってみて実現したいことを試してみることが大切です。その上で、それを正式なシステムとして開発してもらう方がトータルでのコストを抑えられます。 最後にITは導入したら終わりではなく、その後の運用が大切になります。運用する中で課題が出てきますので、それを都度改善しつつ使いやすい、本当に役に立つ仕組みに育てていくのです。その運用をどうようにして回していくかも最初に考えておきましょう。自分達で運用していくのか、外部に依頼するのか、それにより依頼先や使うサービスの選定にも影響してきます。

コラム執筆者

長谷川 健一

有限会社人事・労務 パートナーITコンサルタント

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ITを活用して農業経営の「見える化」をしよう!

現在、農業へのIT導入が話題になってきています。これからIT導入を検討する場合、どうやって進めていけばよいのでしょうか?
最も大切なのは「何のためにIT導入をするのか?」にあります。農業と一言で言っても多種多様です。育てている作物から、田畑などの環境、従業員数などの経営規模、これらの要素により発生する課題も変わってくると思います。まずは、自分の農場での課題は何かを洗い出し、その中でITで解消できそうなものが何であるかをはっきりさせましょう。ITはあくまでも道具ですので、この目的がはっきりしていないと、せっかく導入しても効果はありません。今回はその目的の一つにもなる「農業の見える化」を例にIT導入のポイントを整理したいと思います。

「見える化」とは何か?
「見える化」というのは、「一つ一つの作業に関する情報をデータとして蓄積して、そのデータをあらゆる角度から分析することで、現在の経営状態を可視化し適切な経営判断できるようにする」ことを言います。
例えば野菜を育てている農園の場合、「収穫量(個数・重量等)」「農薬散布(量・回数等)」「施肥(量・回数等)」という農作業そのものの情報や、「天候や雨量」「温度」「湿度」などの環境情報をデータとして蓄積していきます。蓄積する際には日時や場所(圃場等)、作業であれば作業者やその作業時間とも紐付けて記録します。従来も手帳等にポイントのみでも記録していた農家さんも多いのではないでしょうか?
ITを使う場合のメリットは記録したデータが大量であっても、それらを分析したり加工したりすることが簡単だということです。記録したデータをいろいろな角度から分析することができます。例えば、同じ品種でも場所(圃場)の違いによって、収穫量がどれだけ違うというのが数値でわかります。収穫量だけでなく圃場によって作業時間が大きく違ったりするケースもあると思います。これら今までも感覚でわかっていたかもしれませんが、それが数値として見えるようになることで、経営へのインパクト度合いが明確にわかり、優先的に対策を打たないといけない課題が何であるかを明確にすることができます。

手間がかかる?
さて、「見える化」をするにはまずは様々なことを記録しないといけません。この手間はどうなるのでしょうか?それでなくても農業は手間がかかるものですので、やる仕事は増やしたくありません。従来は作業をメモしておいて、一日の作業が終わってからパソコンに入力するというケースも多かったと思います。これはとても手間で、入力するのを忘れてしまうことも多いと思います。
最近ではスマートフォンが普及してきたことで、圃場にいながら簡単に入力ができるようになりました。現場で作業した瞬間に記録できますから、メモしておいて後で入力するという二度手間が省けます。作業日時は自動で記録できますし、GPSを使うことで作業場所も自動で記録することができます。それ以外にもスマートフォンと接続できる各種デバイスを使うことで入力の手間を省けます。手軽にできるのがバーコードになります。例えば記録する作物の情報をバーコードにしておき、畝のところに貼っておきます。これをスマートフォンのカメラやバーコードリーダーで読めば入力は不要です。スーパーのレジと同じ仕組みが簡単に作れます。また最近は、センサー技術を使った装置の種類も増えてきました。気温や湿度、土壌の温度等を記録できるものもあります。これらを圃場に設置すれば自動で環境情報を蓄積することができます。

コラム執筆者

長谷川 健一

有限会社人事・労務 パートナーITコンサルタント

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理念を掲げ、共感を生むための「法人化」という選択

はじめに、「法人化」は決して目的ではなく、手段であるということを、ご理解いただければと思います。「農業生産法人」の法人格を取得すれば、農地賃借だけではなく、購入も可能になります。また、法人化のメリットは、その他にもあります。以下に挙げるメリットを享受することが、あなたの理念の追求、事業拡大に必要であれば、法人化という選択肢も、悪くないのではないでしょうか?

〈農業経営を法人化するメリット〉
●「人材を雇用したい」方は、社会保険の整備など、従業員が安心して働くことのできる職場にすることができます。優秀な人材に来てもらい、長く働いてもらうためには、安心して働ける環境が不可欠です。法人になると、就業規則を定め、社会保険や労働保険の加入による負担も発生しますが、これらが従業員の安心につながります。

●「販売を拡大したい」方は、取引先に対する信用力を高めることができます。大手企業の中には、「法人」であることが取引の最低条件とされている企業もあると聞きます。特に、来年度から本格導入されるマイナンバー制度がはじまり、法改正が整うと、個人事業主との取引を嫌がり、法人に需要が集中する可能性があります。(マイナンバー制度対策については次号)

●「円滑な経営継承を行いたい」方は、経営や農地、技術を次世代に残すことができます。
個人の経営では、農地や農業用施設に係る相続税の負担や、利用権の再設定等が必要となる場合があります。「法人」であれば、経営資源の分散を抑制できるほか、従業員の中から後継者を選ぶことも可能になります。

●「農業所得が400万円を超えている」方は、節税することができます。個人の経営では、農業所得に所得税が課されますが、所得税は累進課税であるため、所得が大きくなるほど税率も高くなります。法人化すると、所得を給与として分配することにより給与所得控除が認められ、所得400万円以上の場合には、所得税より法人税の方が納税額は低くなるので、節税することができます。また、法人になることで、経営が赤字になった場合に欠損金を最大9年間繰越控除できるなどの税制優遇措置もあります。

さて、この中に、あなたが、ご自身の掲げる理念、描くビジョンを実現するために享受すべきメリットはありましたか?

「法人化」とは、通過点であり目的ではありません。メリットばかりでなく、法人税を支払わなければいけなかったり、社会保険料を支払わなければいけなかったり、場合によっては他人に経営権を譲らなければいけなかったりという場面もあります。
そういったメリットの半面であるデメリットも考え、それでも事業を行ううえで法人格が必要であれば、法人化という選択も良いと思います。大切なのは、どのような理念を持ち、どのようなビジョンを描いているのか。また、その事業を通して、どのように社会に貢献していきたいのかということです。「法人化」はその過程の単なる手段にすぎません。人間寿命を終えるという概念がありますが、法人には寿命という概念はなく、「継続」を前提に考えています。自分だけでは到底叶えられない大義を果たすため、永久的に続く経営体が法人です。短絡的な考えにより手段として選択したり、自分自身を大きく見せるために法人化の道を選ぶことは、大きなリスクだけを背負うことになります。自分自身、そして組織としての理念は何か。まずはそこを問うてみてください。

コラム執筆者
プロフィール・ご相談

矢尾板 初美

有限会社人事・労務 パートナー
行政書士

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農地所有適格法人を設立する流れ

農地法の改正によって、平成28年4月から「農業生産法人」の呼称が「農地所有適格法人」に切り替わります。単に呼称が変わるだけでなく、その要件もかわり、より法人化へのハードルが低くなります。
では、法人の設立自体、どのような変化があるのでしょうか?今回は、農地所有適格法人の設立の流れについて、解説をしていきます。

◆農地所有適格法人設立の流れ(株式会社)◆
①発起人の決定・発起人会開催
設立時のメンバーのことを発起人と呼び、発起人の方々が設立後のことを話し合う
公式な場のことを発起人会と呼びます。
②類似商号調査
法人格を有する場合、法人名が必要になりますので、同じあるいは酷似する法人名
を使用している会社がないかを事前に調査します。
③定款の作成(農地所有適格法人設立の場合は、株式譲渡制限の定めが必要)
全ての株式の取り扱いに関しては、株式会社の承認をえなければならないという内
容を、定款の中で定めることをいいます。
④定款の認証
法務局に定款を提出し、認証をえます。期間は約2週間~1ヶ月ほど。
⑤出資金の払い込み
出資金は、発起人メンバーで話し合い決め、口座に払い込みます。
⑥役員等の選任
代表取締役など、役員の選定を行います。その際、役員の過半が農業の常時従事者
(原則年間150日以上)であることが要件に含まれています。
⑦設立手続きの調査
(2週間以内)
⑧設立登記申請
登記事項書類をそろえて法務局に提出します。
⑨設立登記完了
設立登記完了と同時に設立となります。
⑩登記事項証明書・印鑑証明書など必要書類の交付申請
法務局にて申請をします。
⑪農地所有適格法人の適格審査申請と農地法許可申請※
農地所有適格法人とは、その会社組織が農地所有適格法人適格審査要件と農地法3条に規定された許可基準の要件(コラム『農地法改正!「農業生産法人」から「農地所有適格法人」へ!』にて記載)の両方を満たさなくてはなりません。
⑪税務署等諸官庁への届け出

1)適格審査とはその設立した法人が農地所有適格法人たる要件を具備しているかどうかの審査です。
2)次に農地法の一定の要件ですが、農地の所有権、使用貸借権など農地の権利移動のためには知事又は農業委員会の許可が必要になります。農地は農業をするための土地であるため、その法人が確実に農地として使用するかどうかも審査対象になります。

1)2)の要件を満たすことで農地所有適格法人になります。
なお、農業生産法人と農地所有適格法人の要件の変化の詳細は、コラム『農地法改正!「農業生産法人」から「農地所有適格法人」へ!』にて記載しておりますので、合わせてご確認頂ければと思います。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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農地法改正!「農業生産法人」から「農地所有適格法人」へ

皆さんは、「農業生産法人」という名称が、平成28年4月から、「農地所有適格法人」という名称に変わるって、ご存知でしたか?実は、農地法が改正され、名称が変わるだけでなく、要件の規制も緩和されます。

今回の改正に関してまず、国が考える一番の目的は、農業従事者の高齢化の問題や個人所有の分散した農地をどう集約するかという耕作放棄地の問題があると考えます。
前回の改正もその目的に沿った形で、個人だけでなく会社形態の企業が農業分野に参入しやすくする規制緩和が行われました。そして今回の改正もその趣旨にそった形で法改正が行われたといってよいでしょう。すなわち、株式会社など会社法上の企業が農業に参入しやすくなる制度に改正されたということです。

 また、農地法上の要件を満たした、農地を所有できる法人として法律上明確にするために、従来の農業生産法人から農地所有適格法人と名称も変更されました。

 では、その農地法上の要件の変更とは、どのような内容でしょうか?
以下のように比較をしてみましょう。

 【改正農地法「農地を所有できる法人」の要件の緩和】

 まずは、要件のうち、変化のないものについてです。

 ●法人形態要件
・株式会社(公開会社でないもの)、農事組合法人、合名・合資・合同会社

 ●事業要件
・主たる事業が農業(農産物の加工・販売等の関連事業等)が売上高の過半

 

 次に、変更になった要件をみていきましょう。
変更になったのは、以下の二点です。

 ●資本(構成員)要件
《改正前(農業生産法人)》
1)農業関係者※が総議決権の原則として4分の3以上を占めること
2)農業関係者以外※の議決権の4分の1以下は、法人と継続的取引関係を
有する関連事業者等に限定(商工連携事業者等の関連事業者の場合は、
総議決権の2分の1未満まで可能)

 《改正後(農地所有適格法人)》
1)農業関係者が総議決権の原則として、2分の1以上を占めること
2)【新設】農業関係者に農地中間管理機構又は農地利用集積円滑化団体を
通じて法人に農地を貸し付けている個人が加わった

 ●役員要件
《改正前(農業生産法人)》
1)役員の過半が農業の常時従事者(原則年間150日以上)であること
2)更にその常時従事者である役員の過半が
農作業に従事(原則年間60日以上)

《改正後(農地所有適格法人)》
1)改正前から変更なし
2)役員又は重要な使用人(農場長等)のうち1人以上が
農作業に従事(原則年間60日以上)

 上記のように、法改正によって、農業の業界自体への参入が容易になり、一般企業と農家の地域内での協力が促進されるのではないでしょうか?

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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話題の「地方創生」を分解する

「地方創生(まち・ひと・しごと創生法)」は、国内人口の減少や東京圏への過度の人口集中、それに伴う地方経済と大都市経済での格差が年々広がる現状と将来予測に基づき、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために制定されました。

これまで、地域活性化の対策の法としては、例えば平成17年の地域再生法があります。この法律は地方自治体が施策に対して補助金など支援措置が受けられることを主たる目的とする法律でした。今回、まち・ひと・しごと創生法と並行してこの法律も改正に至り、いよいよ、現実的な日本国内の地方活性化の必要性や危機感を政府としても強く認識していることのあらわれではないでしょうか。

【法律の概要】
地方創生の目的・理念から、政府・地方自治体の戦略策定の方法、組織体制を定めたものです。今後我が国がまち・ひと・しごと創生を中長期にわたり取り組んでいくに当たっての、基本的な枠組みを示した「基本法的な」法律といえます。特に具体的な施策の策定は、目的と理念を定めた第1条と第2条の精神に従って策定されるため重要条文です。

では、この法律の重要条文である、1条2条を考えていきましょう。

(1)第1条の性格・特徴
「第1条
少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、まち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施する。」

まず、「まち」「ひと」「しごと」が平仮名表記の法律はあまりないのではないでしょうか?創生法における「まち」・「ひと」・「しごと」とは、単に物理的な側面での「町」(又は「街」)・「人」・「仕事」ではありません。まち・ひと・しごと、それぞれの言葉に漢字表記では表現できない意味やイメージを持たせているといってよいでしょう。
まち・・国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を 安心して営むことができる地域社会の形成
ひと・・地域 社会を担う個性豊かで多様な人材の確保
しごと・・地域における魅 力ある多様な就業の機会の創出

また、「創生する」は地方を作り出すことと明示している。これは、これまでの地方分権のニュアンスとは幾千考え方が異なるものだといえます。

(2)第2条の性格・特徴
「第2条
①国民が個性豊かで魅力ある地域社会で潤いのある豊かな生活を営めるよう、それぞれの地域の実情に応じた環境を整備
②日常生活・社会生活の基盤となるサービスについて、需要・供給を長期的に見通しつつ、住民負担の程度を考慮して、事業者・住民の理解・協力を得ながら、現在・将来における提供を確保
③結婚・出産は個人の決定に基づくものであることを基本としつつ、結婚・出産・育児について希望を持てる社会が形成されるよう環境を整備
④仕事と生活の調和を図れるよう環境を整備
⑤地域の特性を生かした創業の促進・事業活動の活性化により、魅力ある就業の機会を創出
⑥地域の実情に応じ、地方公共団体相互の連携協力による効率的かつ効果的な行政運営の確保を図る
⑦国・地方公共団体・事業者が相互に連携を図りながら協力するよう努める」

上記は基本理念7箇条であり、第1条のまち・ひと・しごとに対する施策を展開していくよりどころとなります。また、努力義務ではありますが、法律に「事業者」と明記されていることは、「事業者」の協力が地方創生に欠かせない役割を担っていることを想起させます。
ひと・まち・しごと創生法は、地方自治体への補助制度ですが、地方自治体単体では、地域を創生することはできません。いかに、地域の担い手である農家や会社などの事業者が主体的に関わることができるのかどうか。それが最も重要になります。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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今後の日本の農産物の海外市場への輸出可能性を考える

こんにちは、農縁団の藤田です。最近の農業のニュースを見ていると、農産物の輸出が取りざたされていることがあります。今日本ではどんな農産物が輸出されていて、相手輸出国は、流通は等々・・そして「農産物の海外輸出をこれから事業としてやっていきたい!」。今回は、日本の農産物輸出の今後の展望について考えてみたいと思います。

始めに、どんな農産物が輸出されていているのか、主だったものを見てみます。農産物全体で見ると加工食品が5割前後を占めています。野菜・果物等は1割以下となっている現状です。また、主要相手輸出国を見ると、香港・韓国・台湾などアジア中心になっています。輸送や品質管理の問題も考えると妥当なところではないでしょうか。

次に、日本を取り巻くアジアを中心とした、海外に目を向けて見ます。農水省農産物統計によると日本の過去10年間の農産物の輸出はアジア諸国を筆頭に堅調な伸びを見せています。その原因の1つにアジア諸国の高い経済成長によって所得の水準も上昇し、美食意識や健康志向が高まってきていることが大きいでしょう。また、アジア諸国へ日本企業進出による海外日本人の増加や定年後のアジアへのロングステイなど海外の日本人の増加も考えられます。

さらに、長い伝統と高い技術水準に裏打ちされた日本の農産物は、海外においては、高級品質農産物と認知されています。今後オリンピックなどで、日本へ来る外国人観光客も増えれば、ますます日本の農産物のすばらしさが認知されていくでしょう。代表的なものには、青森リンゴ、神戸牛、新潟米コシヒカリなど・・・
また、最近、出始めている外国人に向けた日本の農産物のお土産ビジネス(相手国によっては、お土産として輸出できないものもありますので注意が必要です)も日本の農産物の認知度を上げてくれるはずです。

最後に、世界の経済政策や為替相場に目を向けてみると、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)や円安政策は農作物の輸出だけを考えると追い風でしょう。

日本を取り巻く環境的には、これから「農作物を海外に輸出する事業に乗り出したい!」という方、には最適の環境かと思います。

ただ、今後、輸出事業に参入するうえでのボトルネックとなるのは、やはり流通経路と現地販売先の確保だと思います。しかし、例えば、現在ホクレン通商やジェイロなどの機関では、様々な農家の日本の窓口となり、相手国との安定供給に資するため、全国各地の農作物を集約し輸送コストの低減をはかり流通経路の確保、相手国販売先への窓口になるような役割が期待されています。今後日本においては行政機関でも、このような取り組みを推進していく方向です。

そして、農作物の輸出自由化の度合いが大きくなればなるほど、我々も農家さんも絶えず相手国の人々のニーズを追及し競合他社に負けないような、高いマーケティング能力が求められていくでしょう。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談藤田 拓哉

行政書士・社会保険労務士

 

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都市農業で食べていくためには

1、だから私は帰農した
そもそも私は、野菜があまり好きではなく、おじいちゃんの作る新鮮でおいしい野菜しか食べることが出来ませんでした。幼いころから、新鮮な野菜が食卓に並ぶのが当たり前で、スーパーなんかで野菜を買っても、美味しくないから食べられない。そんな日常が去ったのは、7年前の、おじいちゃんの死去が原因でした。おじいちゃん亡き後、おじさんが畑を継いで野菜を作っていたのですが、なにしろ経験不足と会社に通いながらの兼業という事もあってあのおじいちゃんが作る野菜には、まるで及びませんでした。当時私は、所見会社で働く会社員だったのですが、会社員に少し疲れていたのと、また新たなことを学びたいという意欲も相まって、思い切って農業を勉強することになりました。千葉大学の園芸別科に入学し、2年間の実践的なカリキュラムを経て、ついに独立して農業を営むこととなりました。とはいえ、始めの3年間は試験的に様々な野菜を作り、感覚や経験を養う期間が必要だと判断し、医療事務との兼業で、忙しいながらもさらに体に鞭を打ち、3年後には専業として農業で食べていくという覚悟のもと、必死に試行錯誤を繰り返しました。そして、その目標通り、育てる野菜の品目などを決め、感覚や経験を養い、昨年から3年間の兼業の期間を終えて、専業農家として、都市農業という舞台に、挑戦を始めました。

コラム執筆者
苅部 弥生

農業経営者/都市農業アドバイザー

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農業法人化のメリット・デメリット

税理士として仕事をしていて度々いただくのが、「農業を個人で営むべきか、法人で営むべきか」というご質問です。
この点について、実は絶対的な答えというものは存在しません。個人事業主として農業を続ける良さもある一方、農業法人化して組織的に活動する良さもあります。最終的には法人化することのメリット・デメリットをご説明し、事業主様自身にご判断いただくことにしております。このホームページをご覧の皆様の中にも同様のお悩みをお持ちの方がいらっしゃるかと思いますので、農業法人化のメリット、及びデメリットについて述べたいと思います。
(以下、株式会社形態の採用を前提としています)

<農業法人化のメリット>
一般的に言われている農業法人化のメリットを列挙すると以下の通りです。
1.税制面で優遇されることが多い
(1)役員間の所得の分散により、節税が可能。
・役員に対する報酬については法人税法上も損金算入できるため、事業主から所得を分散することができ、節税につながります。
・役員に対する退職金についても法人税法上損金算入できます。
(2)法人税制の適用による定率課税で節税となる。
・中小法人の場合、課税所得額が330万円超800万円以下、あるいは900万円超で法人税の用が所得税に比べ税率軽減となります。
(3)欠損金の扱いが法人税法適用で有利となります。
・欠損金につき、9年間繰越控除ができます(個人事業主は3年間のみ)。
2.資金融資枠の拡大
・一般的に、個人に比べ法人は借入金等の融資限度額が大きくなっています。

<農業法人化のデメリット>
1.法人の設立に費用が掛かる
・株式会社では、会社作成に約30万円、司法書士に委任すれば委任料が15万円程度加算されます。
2.地方税の均等割負担額が大きくなる
・たとえば東京都の場合、個人地方税の均等割額が計4,000円なのに対し、法人地方税均等割額は70,000円以上になります(会社規模により異なります)。

3.相続税の納税猶予制度が適用されなくなる。
・農業後継者の農地相続には相続納税猶予制度がありますが、法人経営で構成員が所有する農地を法人に貸している場合、その構成員が死亡したとき、所有する農地を法人に貸していたことからその構成員の相続人は(その法人に貸してある農地について)相続税納税猶予が受けられなくなる場合があります。相続税評価額の高い地域では特に注意が必要です。

以上、農業法人化のメリット・デメリットにつき、税制面を中心に記述いたしました。事業主様方はこれらを参考にしていただき、納得のいくご判断をしていただければ幸いです。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談網野 誉

網野誉公認会計士事務所代表

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六次産業化視察研修ツアーのご報告

先月の8月20日に弊社で、「六次産業化視察研修ツアー」のため長野県小布施町・中野市を訪問したことについてご報告致します。

小布施町・中野市は、長野県の北東部に位置し、小布施は長野県で最も小さい街で、葛飾北斎をはじめ、様々な歴史的遺産を活かした町づくりで話題を呼び、人口約1万1000人の町に年間延120万人の観光客が訪れ、今や北信濃有数の観光地としての認知度も高まっています。一方中野市は、新潟県にも非常に近く、高井富士は温泉やスキーの観光スポットしとても有名で、歴史、文化、そして農業がとても盛んな街で、特にえのき茸の生産量は日本一を誇るそうです。

そんな魅力あふれる街へと、東京から訪問し、長野県在住の若手農業アドバイザーの日暮さまにこの日一日ご案内していただきました。

まず、最初に訪れたのが、栗かのこで有名な小布施堂などの中心街から少し離れた郊外にある「6次産業センター」という直売施設でした。
私が最初に目に付いたのが地元で取れた果物を加工したアイスクリームやジュース、ラスクなどの加工品、
そして小布施直産のブドウや桃などの果物類、都内ではあまり売ってない少し珍しい野菜なども販売し、平日でも大変賑わっていました。

この地域では、小布施産の商品に新たな付加価値を生み出して、小布施産とであるということに一つのブランド化ができていました。
販売している商品の中にも、実際に農商工連携の認定をもらったものなども販売されていました。施設の関係者のお話を聞くと、小布施が都内の有名カフェとのコラボレーションも果し「栗と言えば小布施」というように、その地名も多くの方にも浸透しているそうです。
ここの施設では商品のブランド化の例と他者とのコラボ、そして生産者が作った農産物などがいかに売れていくのかなどを学ぶことができました。

そして次の訪れたのが、中野市のブドウ農園です。当日ご案内していただいた日暮さんのご友人である方の果樹園で、
その広ささは約一町歩(3000坪)、私達の地域からすると考えられない広ろさなので大変驚きました。
農作業はほとんど手作業で行いブドウを袋に掛けたり、芽を摘むなど、しかもそれを2~3人の少人数で行っているというので聞くだけでも気が遠くなりそうです。
私達が訪れたこの時期はちょうど収穫期だったため美味しそうなブドウが沢山実っていました。

この農業が盛んな中野市で今問題となっているのが、農家さんの高齢化と新規就農者などの不足、そして農園を手放す方も多いため耕作放棄地が年々増加していっていることなどです。また農作業は製法や栽培に独自の技術が必要となるため、それと新規就農者に伝えるのも非常に難しいといった課題もあるそうです。

この一日の視察研修ツアーを通して感じたことは、商品の販売や農業の現場を実際に目で見ることで食に対するありがたみと感謝の気持ちを再度認識できました。またそれと同時に、実際の農園の現場を見て、私達が想像している以上に就農者不足などの問題が深刻化しているということも感じました。この日一日かけてご案内してくださった日暮さんも、私達にこの現状を一番伝えたかったのかもしれません。

私達が農やまちづくりを応援していく上でも、この労働力不足や耕作放棄地のことはどうしても避けることができない課題です。
そのためにも、地域の今まであった魅力を再発見し、それを最大限に活用して、新たなイノベーションを起せるかが、
これまでの地域の環境を大きく変えるきっかけになると考えています。
その一つヒントになるのが、小布施と都内の有名カフェとのコラボレーションの様な「都市と地方が繋がる」といったことなのかもしれません。
この日学んだことを、多角的な視点をもって今後の農業経営コンサルにも活かせるようにしたいです。

コラム執筆者
古田土 和佳

埼玉県行政書士会 所属
OPEN UP‘S 所属
行政書士 古田土法務事務所

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宇都宮産のナシを使った「おもてなし紅茶」で地域ブランド活性

1、生産者との出会い
2008年の春、宇都宮市郊外にある「山口果樹園」さんが、緊張の面持ちで宇都宮市の中心部にある私の経営する店舗「世界のお茶の専門店Y's tea 」にお越しになられた。と言うのは、生産者である山口さんにとって、大きな川を越えて、更に市街地へ足を運ぶというのは滅多に無いことだそうで、更には商業者に何かを依頼をするというのは初体験だったそうだ。
ティータイムを楽しまれた後、私に会いたいと仰った山口さん。実は、ナシ経営に新しい風を吹き込みたいとこのことで、当時より栃木の農資源を活用して新しい商品を開発していた私に、ナシと紅茶のコラボレーションは出来ないかとの依頼であった。
栃木を元気にする為に、宇都宮市の中心部を活性化する為にUターン起業した私にとって、今回の依頼を引き受ける事は当然の事ではあるが、何よりも心を動かされたのは、山口さんの誠実さと熱意、紅茶への敬意、そしてナシへの愛情だった。更に、山口さんは弊社が主催する紅茶教室にも申し込まれ、ご自身も紅茶の勉強をして私達との距離を縮めようとする姿勢にも感銘を受けた。それが今回の成功のルーツであったと言っても過言ではない。
加えて私は、取り掛かる前に簡単なルール決めをした。
(1)完成まであきらめずに取り組む
(2)生産者が主役になる(つまり素材提供で終わらない)
この2つであった。

2、ナシと紅茶の関係
例えば栃木名産のイチゴであれば、独特の香りと味があり紅茶やスイーツへの応用も比較的しやすい。では、ナシはどうかというと、ナシはみずみずしさとしゃりっとした食感が特徴の果物・・・つまり紅茶としてナシの風味を表現するのは非常に難しいのだ。
山口果樹園さんの熱意に快諾したものの、直ぐに「ナシの紅茶は、完成までに時間が掛かると思います」と付け加えたのはその理由だった。
成功へは、紅茶とブレンドする事によって「ナシよりもナシらしい味」の紅茶に仕上げる必要があったのだ。でないと良くある「みやげもの」になってしまい、彼らが紅茶専門家に依頼した意味がなく、Y's tea としてのブランドイメージの低下にも繋がるからだ。
因みに、私の考えではナシの実と皮両方を乾燥させて、実は甘みを、皮は香りをと、役割をそれぞれに与えて紅茶とブレンドするというものだが、「時間が掛かる」と言ったのにはその「乾燥」に関しての事であった。問題点は、
(1)水分が多く、乾燥が難しい
(2)糖度が高く、べたつきにより茶葉とくっついてしまう
そして先述の
(3)ジューシーさと食感が売りの、ナシの「風味」をどう表現するか
の3点であった。
1で述べた「取り決め」通り、山口さんにはナシの提供だけでなく、実と皮の乾燥も担当していただく事にした。これにより「協働作業」の意識がより高まり、お互い行き来する頻度も増え結束も強くなると思ったからだ。
もう1つ拘ったのが、「ナシの品種」だ。実は山口果樹園さんで栽培している9種類のナシ全てを乾燥して紅茶との相性をみたのだ。つまり、前品種を収穫し終えてから最終判断をしようと。その結果、想像以上にナシ毎の個性が紅茶と合わせた時に出ることが分かり、生で食べた時と乾燥した時の印象が変わる事にも驚いた。
2008年も終わりに近づく頃、全品種の試食した結果
(1)味
(2)香り
(3)栃木らしさ
(4)インパクト
の点全てで満点だった、栃木県特有品種のナシである「にっこり」を、紅茶のブレンドに用いることを決定した。大きくて、ジューシーで甘い。そして栃木オンリー品種のにっこりは、主役にうってつけだった。
その後早速にっこりの乾燥形態を試行錯誤し、乾燥試験を始めた。その間、お互い何度も行き来したことは言うまでもない。

3、3年の年月をかけてとうとう完成!
長く掛かると言ったものの、山口さんも私もここまで掛かるとは・・・というのが正直な感想だ。当初の予想通り、乾燥は困難を極め、味は良いものの、水分が抜けていなかったり、べたついてしまったり、乾燥しすぎるとナシの風味が消えてしまったりと、やればやるほど問題点が出てきた。特に夏場の多湿な時期は乾燥には大敵であった。
1年間乾燥について悩んでいる我々に、お世話になっている栃木県の産業振興センターさんから、「乾燥のプロフェッショナルを探しました!」というお話が。
直ぐにお願いをして、土田技術士事務所の土田茂氏をご紹介頂き現状を報告。すると土田氏は、様々な選択肢を彼の豊富な経験からご提示くださり、そのアドバイスを生かして直ぐに実践→結果を報告し、次のステップへ。という行程を3度経て、とうとう理想的なドライフルーツが完成した。しかし、やはり湿度は大敵。ドライフルーツの作業(乾燥)は、湿度の低い時期のみにする事にし、雨天時と夏場は不可とした。
次回、商品の特徴や生産者のコメント等を伝えてきたいと思う。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談根本 泰昌

ワイズティーネットワーク株式会社 代表取締役社長
世界のお茶の専門店Y's tea(ワイズティー)オーナー

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「東京青果(株)」の戦略を聞いて

青果物取扱い高日本一を誇る、東京青果(株)の宮本修専務のお話しは、地域ブランドアドバイザーをしている私にとっても、大変参考になりましたのでお伝えしたいと思います。
(1)日本の野菜の生産、流通状況の変化について…
日本国内での野菜の生産量は年々減少し、2010年には約1100万トンとなり、20年前と比べると約5割減だそうだ。そして、東京中央卸売市場の取扱い量も、2割減の153万トンとなってしまったそうだ。
野菜の生産量が減った原因は、生産者の高齢化による農業の廃業。廃業した農地は、宅地に転用されたり、耕作放棄地として荒れ地になっているところも多い。
(2)卸売り会社としての危機感から始まった取組み…。
野菜を扱う東京青果は、国内の野菜生産を拡大するため、2008年に産地開発室を社内につくった。産地開発室のテーマは「地方野菜の掘り起こし」。特に、地方で消えつつある野菜を再び栽培してもらうことに力を注いでいる。
産地開発は、東京青果と産地、種苗会社、小売り業者が一つのグループとなって取り組んでいる。産地開発は生産者の心を動かす活動なので、コミュニケーション能力がたいへん重要になる。そこで、退職したOBを再雇用して種苗会社と一緒に出向き、生産品目を提案しているそうだ。
(3)東京青果の事業ビジョン…
東京青果は、全国各地の埋もれた野菜を掘り起こし、生産者に栽培していただき魅力ある“ブランド野菜”として販売する。(例:加賀野菜、京野菜など。金額では3億円と全体の売上からすると小額だが、存在感はたいへん大きい)
宮本専務は言う。『地方に眠っている魅力ある野菜を掘り起こし“ブランド野菜”として確立し、いかに宣伝し、販売していくかが、我々の仕事です。ロットの大小の問題じゃない。逆に、よそでは扱っていない野菜を独占できれば、商売にとってプラスですよ。』さらに…『市場側も競争です。生産者にはきちんとお金を取ってもらわなければいけません。つくる人がいなくなれば、我々も生きていけませんから…。』

コラム執筆者

プロフィール・ご相談八坂 博信

ビジネスプランナー/ 地域ブランドアドバイザー

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TPPに関する講演の要旨と私見

 先日、TTP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関連する講演を聴く機会がありましたので、そこで話された内容のご紹介と私なりの考えを述べさせていただきます。
講師は、キヤノングローバル研究所の山下研究主幹でした。山下氏は、東大法学部から農水省に入省し、2008年退省まで農林水産分野の政策の中枢にいたキャリヤ官僚ですが、直接話をすると以外に気さくな方です。
さて後援の内容は、今盛んに議論されているTTPの解説でした。その一部ですが…

  1. 「日本の農業はアメリカや豪州に比べて規模が小さいので、TPPに参加すると価格競争で負けてしまうという論理は間違っている。なぜなら…
    (1)世界最大の農産物輸出国アメリカは、豪州の19分の1しかない。
  2. 農業スタイルが違う国を同じ条件で比較するのはおかしい。
    (1)アメリカは肥沃な農地でとうもろこしや大豆を栽培し、豪州は痩せた牧草で肉牛を飼育している。日本農業は稲作主体である。
    (2)同じ作物でも面積当たりの収量に大きな格差がある。例えば、豪州の小麦の面積当たりの収量はイギリスの5分1しかない。
  3. 国際競争で最も重要なのは品質である。(ブランド化)
    (1)日本の米は最も高い評価を受けている。現在,香港では、日本産コシヒカリは、カリフォルニア産の1.6倍、中国産の2.5倍の価格となっている。
    (2)国内産の同じコシヒカリでも、魚沼産と一般の産地では1.7~1.8倍の価格差がある。
    (3)アメリカやEUは直接支払いという鎧を着て競争している。世界に冠たる品質の米が、生産性向上と直接支払いで価格競争を持つようになると鬼に金棒となる。
    (TTP反対論者は、品質格差を考慮していないばかりか、対象にならない生産物の数値や10年前の生産内容を使って算定した数値で、TTP参加に反論している)
  4. “関税から直接支払いへの移行”という政策転換は、農業保護の手法を変更するだ けで、農業を市場経済に全て委ねるものではない。グローバル化は現在進行している事実であり、反グローバル化を唱えることは問題解決にはならない。…等

ちなみに、山下氏はTTP推進論者ですが、私も考え方には賛同する部分がたくさんあります。
情報が少ない時代は狭い範囲で一つの社会が成立ちましたが、これだけ情報化が進めば国家単位でも他国を無視した社会システムは成立ちません。特に資源の少ない日本の場合、国際取引きを前提にしない経済成長はあり得ません。また、情報化は“自由化”と併行して進んできた経緯があります。そのなかで農業分野だけは、あまりにも長く自由競争の社会から隔離され、“保護”という心地良い政策のもと自らの改革スピリッツすら奪われてきたような気がします。
TTP参加は、時代に要請であり、これまでに培ってきた農業生産技術とそこから生まれる商品の品質の高さ、安全性を世界に示す絶好の機会と捉えるべきではないでしょうか。そして、国は、保護政策にカネと知恵を使うのではなく、農業分野の国際競争力を促すイノベーションにこそ使って欲しいものです。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談八坂 博信

ビジネスプランナー/ 地域ブランドアドバイザー

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教育現場の食育の現状と農業の可能性について

農業を食育活動、または体験学習として生かそうとする教師が、増えているという。


2002年度に「総合的な学習」が本格導入されたのを機に、農業体験を導入する小中学校が増えた。しかし、受け入れ農家に“丸投げ”するだけの教師も多くいるという。

この話を聞いたとき、私が保育園で働いていた時のことを思い出す。

保育園でも栽培に力をいれているところは多いが、職員のほとんどは農業体験を全くしていないため、土も触れないし、もちろん虫もダメ…
やはり職員の教育が先なのだろう。

しかも農業体験だけでは「体験学習」とは言えないのだが、食育を理解していな職員が多いのが現状だ。

その体験を生かすために、事前に興味がわくような体験をさせたり、終わった後に振り返りとして展開させたりしなければせっかくの貴重な体験もあまり意味がない。

そこに生産者の持っているスキルやノウハウが活かすべきではないのか。

農業のノウハウや、こだわりなどを伝えて体験させることで子どもたちが心と頭と体で農業を感じる…
そうすることで初めて「体験学習」をしたことになる。

高学年が低学年を指導する異学年交流や、収穫した農産物を高齢者に振る舞う福祉活動など、地域交流も含めた学習につなげる学校が増えてきた。

また大阪府の教育委員会と農業委員会で「農業・教育連携協議会」を発足させ、学童農園のシステムを確立したのをはじめ、埼玉県では、県内の全教員に県総合教育センターでの農業体験研修を必修化するなど、行政レベルでも積極的な姿勢が見えている。

農業界でも最近はさまざまな取り組みを初めているが、やはり単なるボランティアではなく、事業としても採算が取れる、少なくとも持ち出しにならないスタイルを模索している農業法人が多い。

ある肉牛肥育農場では、NPO法人と連携し、直営レストランでの試食交流など採算のとれる取り組み以外は、NPOの活動として切り分け、助成金を活用した農業体験事業を展開している。

また、栽培指導などソフト面を充実させ、1区画30㎡5万円の「農業体験農園」を成功させている農業者もいれば、県と連携してコテージ付きの宿泊型市民農園を運営している農業法人もある。

農業の価値は、農産物をそのまま販売するだけでなく、加工品にして販売するのはもちろんだが、農産物以外の農業技術や農地空間が、コミュニケーションや心の癒し、教育といったソフト面でのビジネスにつながる可能性を持っている。

農産物販売だけではない農業の価値を、農業界もそろそろ真剣に検討すべき時期ではないかと思う。

コラム執筆者

プロフィール・ご相談朝日 智都

食楽研究所代表

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コラム1:外国人滞在について

2011年10月末の外国人雇用状況は、厚生労働省の調査によると、労働者数は68.6万人となっており、毎年外国人雇用は増加傾向にあります。
労働力の強化をするため優秀でモチベーションの高い外国人労働者を雇い入れることは、日本の企業にとって即戦力を得ることとなり、多くのニーズがあります。
また、2012年7月から新しい在留管理制度の導入に伴って外国人登録制度は廃止されることになり、在留カードが交付されるなど、変化が起こり、外国人が日本に滞在しやすいメリットが増えます。したがって、より外国人が日本に滞在しやすくなるため、在留する外国人が増加する可能性が高くなります。それに比例して、外国人側も日本で働きたいという人が増加するので、企業側は受け入れる体制を整え、外国人雇用の知識を多少なりとも得ておく必要があるのではないのでしょうか。
では、外国人を雇うためにはどのような手続きが必要なのでしょうか。以下ご説明させて頂きます。

まず、外国人を雇うためには、外国人が日本に滞在しなければなりません。しかし、外国人は原則、日本で自由に働けるわけではありません。日本の法律では、外国人の出入国の管理について、主権国家である日本が国の内外の事情、その際の外交関係や国際情勢、国内の経済・労働事情や治安状況など様々な事情を勘案して、外国人の入国・在留を許可するかどうかは、自由裁量によって決定できるとして、国際慣習法が確立しています。
日本の最古裁判所も「憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を保障する旨を規定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していないものであり、このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができる。」としています(マクリーン事件判決)。
そのため、外国人が日本で働くためには、様々な手続きや書類が必要です。
その中でも外国人が日本に就労目的で入国するためには原則として、有効な「パスポート」「査証(ビザ)」「在留資格」が必要です。さらに外国人は与えられている在留資格の内容と仕事の内容が合致しなければ働くことができません。これを「活動に基づく在留資格」と呼びます。
また外国人の就労が認められるもう一つのパターンは、「身分または地位に基づく在留資格」と呼び、これは永住者や日本人の配偶者、永住者の配偶者等が当てはまります。
身分に基づく場合は上記の「活動に基づく在留資格」とは異なり自由に働くことができます。
このように在留資格によって、働くことができる職種や期間に異なる点があること、有効な必要書類があることを確認してから外国人を雇用しなければなりません。
もし、これらを確認せずに企業が外国人を雇用した場合は、状況により3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられることがあるので細心の注意が必要です。

コラム執筆者
プロフィール・ご相談
中尾 憲太

神奈川県行政書士会 南・港南支部所属
(有)人事・労務関内オフィス長、日本ES開発協会 統括幹事

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